正当防衛 刃物で怪我をしたり怪我をした後で成立するか?
正当防衛で刃物を使って怪我をさせたり、怪我をした後に成立するか
正当防衛(刑法第36条)は、「急迫不正の侵害」に対して、自分や他人の権利を守るためにやむを得ず行った行為が違法ではないとされる場合に成立します。ポイントは以下の通りです
成立条件
急迫性
危険が今まさに迫っていること(過去の侵害や未来の予測では不可)。
不正性
相手の行為が違法であること。
必要性
その危険を避けるために他に方法がないこと。
相当性
反撃が過剰でなく、バランスが取れていること。
刃物で怪我をさせた場合
例えば、自宅に侵入してきた相手が襲いかかってきた場合
刃物で反撃して怪我をさせても
それが「やむを得ない程度」なら正当防衛が認められる可能性があります。
ただし、相手が逃げようとしたり、すでに無力化された後に
攻撃を続けた場合は「過剰防衛」とみなされ、罪に問われることがあります。
怪我をした後:怪我を負った後に反撃する場合も
危険がまだ続いている(急迫性が残っている)なら
正当防衛が成立する可能性があります。
しかし、相手が攻撃をやめて逃げ出した後だと
報復とみなされ正当防衛とは認められにくいです。
2自宅に侵入した場合、強盗とみなされて相手を殺しても罪にならないのか
住居侵入と強盗の違い
住居侵入罪(刑法第130条)は、許可なく他人の住居に入る行為で、それ自体は比較的軽い罪です。
強盗罪(刑法第236条)は、暴行や脅迫を用いて財物を奪う行為で、非常に重い罪です。
自宅に侵入した相手が、単に侵入しただけではなく、暴力を振るったり武器を持っていたりする場合、強盗とみなされる可能性があります。
殺した場合の正当防衛
自宅に侵入した相手が強盗行為(例えばナイフで脅す、殴るなど)を
働いた場合、それが「急迫不正の侵害」に該当し、命の危険を感じて反撃で殺してしまった場合、正当防衛が成立する可能性があります。
ただし、日本では「相当性」が厳しく判断されます。
例えば、相手が素手で軽く抵抗しただけなのに、こちらが過剰に殺傷能力の高い武器で対応すると、過剰防衛とみなされ、殺人罪や傷害致死罪が成立するリスクがあります。
結論
自宅侵入=即強盗とは限らず、相手を殺しても罪にならないかどうかは状況次第です。
強盗行為があり、命の危険が差し迫っていて、他に逃げる手段がない場合に限り
正当防衛が認められる可能性が高いです。
3正当防衛が日本で成立しにくいと言われる理由と成立するケース
成立しにくい理由
日本では「相当性」の判断が厳格で、防衛行為が侵害の程度を超えると
過剰防衛とみなされます。
警察や裁判所が「本当に他に方法がなかったのか」
「もっと穏便に解決できたのではないか」と後から慎重に検証するため
結果的に正当防衛が認められにくい傾向があります。
また、自己判断で反撃すると、後で
「報復」や「私刑」と解釈されるリスクもあります。
成立するケースの例
命の危険が明確な場合:深夜に自宅に侵入した強盗がナイフを手に持って襲いかかってきた。逃げ場がなく、やむを得ず反撃して相手を死なせてしまった。
他者を守る場合
家族が襲われている場面で
加害者を制止するために必要最小限の力で反撃し、結果的に重傷を負わせた。
即時性がある場合
路上で突然暴漢に襲われ、抵抗中に相手が転倒して死んでしまったが、状況から見て反撃が過剰でないと判断された。
日本の司法では、正当防衛を主張しても裁判で認められるハードルは高いです。
実際の事件では、状況証拠や目撃証言、防衛側の行動の詳細が慎重に検討されます。
たとえば、2019年の大阪での事件では、自宅に侵入した
強盗を住人が刺して死なせたケースで正当防衛が認められた例もありますが
これは例外的なケースと言えます。